Archive for 9月, 2011



アメリカに学ぶ食品アレルギ—対策 (その4)

9.20.2011

増え続けるセリアック病への対応

アレルギー患者の中で、最も深刻であるとされるセリアック病をご存知だろうか?この病気、これまで日本を含むアジアでは、症例が少ないとされていたが、最近では、確実に増えているという。アメリカでは100人に1人がセリアック病患者とされ、レストランでもグルテンフリーと書かれたメニュ—が目につくようになった。

セリアック病(※)とは小麦や大麦、ライ麦などに含まれるタンパク質の一種であるグルテンに対する自己免疫疾患のこと。アメリカではセリアック病患者のための食品が多く販売されている。そのような食品には必ず「グルテンフリー(Gluten Free)」と書かれている。スーパーマーケットに陳列されている食品を見ていると、グルテンフリーの食品が多いので、いかにこのセリアック病が多いかが容易に想像できる。確かにスーパーでは、グルテンフリー商品が豊富なので、家庭での食生活は難しくないが、外食をする時には細心の注意を払わないといけない。

ニューヨークでは、グルテンフリーのピッツァやパスタのメニュ—が充実しているイタリアンレストラン「リゾッテリア(Risotteria)」がニューヨークタイムズで評価され話題となった。有機化学のバックグランドを持つオーナーは、6ヶ月の研究と工夫を重ねてグルテンフリーでも美味しいピザやパンが焼けるようになったという。同じくニューヨークタイムズで紹介されたチャイニーズレストラン「グルメランド(Gourmet Land)」では、50種類のグルテンフリーメニューを開発。中華料理は醤油や飲茶などグルテンを使用するメニューが多いので小麦粉の代わりにコーンスターチを使用した。

どんな疾患を持っていても、たまには、友人や家族と共に外食をしたい。病気を気にせず外食を楽しめるのは、アレルギー患者にとっても家族にとっても幸せなことに違いない。そして、食べる喜びを伝え、幸せを形づくる外食産業に従事するあらゆる人達にとっても、あらゆる人に優しくあって欲しい。

国際化が進み、外国からの観光客やビジネスマンは、まだまだ増え続けるし、居住者も増える。外食産業の現場において、食を提供することがひとつのコミュニケーションと考えるのなら、アレルギー表示についての認識を高めながら、良い環境を作っていくべきではないだろうか。

※セリアック病患者がグルテンを摂取するとたんぱく質によって小腸内膜がダメージを受けます。そのためガ下痢や消化不良による胃腸の不快感という症状が出ます。また、小腸の栄養吸収がうまく行われないので貧血症やビタミン不足を招きます。



アメリカに学ぶ食品アレルギ—対策 (その3)

9.16.2011

外食企業向け「スタッフ教育ビデオ」

米国の外食業界は、従業員向けの「アレルギー教育」にも熱心に取り組んでいる。具体的には、レストラン協会、健康専門家、シェフなどが共同開発したスタッフ教育ビデオ「Restaurant Training Program」などがある。食物アレルギーの基礎知識、店内での対応の方法、ウエイターや調理人の心得、緊急対応などの実践的な知識を提供。このような教育ビデオは、アレルギー患者サポート団体や米国レストラン協会でオンライン販売されている。

レセプショニスト、ホールスタッフ、料理人などレストラン、ホテルの従業員全員が、食物アレルギーに関する知識をもつことで、アレルギー顧客への安心感を与え、サービス向上につながることを推奨している。

ゲストとのコミュニケーションが一番大事

そもそも欧米と日本では、飲食店と顧客とのコミュニケーションの取り方が異なる。米国の外食産業では、ホスピタリティーとして、いかなる客の要望にも応えるというのが、基本姿勢。客の要望はアレルギーによる料理の注文だけではない。宗教や国の違いによる食べ物の好み、ダイエットや糖尿病などの成人病による食事制限、ビーガンやベジタリアン、最近では動物愛護の運動により、ストイックに動物性のものを食さない人が増えている。そのそれぞれの要望によって料理を変えることが当たり前とされているのだ。店側は、予約時に、どんなアレルギーがあるか、食べ物の好みを予めヒアリングし客を迎える。料理人は要望にも対応するため、材料の変更をするのはごく当たり前である。

マサチューセッツ州は全米で初めて、アレルギーを持つ場合に客は店のスタッフにそれを伝えるよう求めた注意書きをメニューに記載する法律を設定。2010年10月から施行されている。法律では従業員のアレルギーへの理解を高めるためスタッフルームにアレルギーに関する情報が書かれたポスターを貼ることも規定されている。また、今年2月1日からは、レストラン一店につき最低一人のマネージャーがオンラインのアレルギーに関するトレーニングを受けなければならなくなった。トレーニングを受けたスタッフは認証書が発行される。トレーニングでは、アレルギー症状の深刻さから、飲食店の厨房での鍋やまな板などの調理器具の使い分け、アレルギー食材の代替え調理法、ホールスタッフの対応方法など、細かく教育される。米国では身近な人がアレルギーで悩んでいる人も多いため、レストラン側は反発することなく積極的に協力している。



アメリカに学ぶ食品アレルギ—対策 (その2)

9.15.2011

食物アレルギーの人や、家族にアレルギーを持つ子供や配偶者がいる人は、想像以上に多い。彼等にとって外食は悩みの種。家庭で料理する際には、アレルギー源となる食材を避けるのに細心の注意を払える。だが、レストランの対応がないことで、家族で外食を楽しめなかったり、友人や親戚が集まる会食がストレスになるのは、悲しい。

アメリカでは、食品アレルギー対応を充実させるレストランが年々増えている。高級レストランからファストフードまで、アレルギー客向けのメニューを用意し、アレルギーの客の料理は必ず別鍋で調理するなど、徹底した取り組みを行っていまる。全米約88万店が加盟する外食産業の団体である米国レストラン協会や食物アレルギー・イニシアチブ(非営利団体)

などが中心となって、食物アレルギーを持つ人が外食を楽しむことのできる取り組みを展開している。例えば、そのひとつの取り組みが「アレルギーカード」の配布。「アレルギーカード(Food Allergy Card)」とは、テーブルについた顧客が自分(家族)のアレルゲン食材を記載し、注文をとりにきたレストランスタッフに渡すことのできる名刺サイズのカードのこと。活動がはじまった2004年には、非営利団体の食物アレルギー・イニシアチブが作成し、患者と外食企業関係者に理解をうながす活動をしていたが、今では、医療機関や保険会社などがカウンセリングをしてカードを発行する場合や、患者自らが自分のカードを作り保持するまでに普及している。

アレルギーの子供を持つ親はレストランで注文する際、子供の食物アレルギーの説明を義務づけられている。このようなカードがあれば、アレルギーを持つ子供やその家族は、面倒な説明を繰り返さなくとも、より気軽に外食を楽しむことができるという訳。飲食店における食品の安全性と信頼性が問われる中、日本のレストランでも顧客が安心して食事ができるひとつの策として、今後アレルギ—カードの導入を考える店舗も出てきそうだ。



アメリカに学ぶ食品アレルギ—対策 (その1)

9.13.2011

米国の食物アレルギーについての情報を提供する「ネットワークフードアレルギー&アナフィラキシーネットワーク(FAAN)」によると、アメリカの人口の約4%(約1200万人)が食品アレルギーとされている。毎年約3万人が何らかのアレルギー疾患によるショック症状を引き起こし、ERに運び込まれるという。その9割は、食品によるアレルギー症状とされ、発作や喘息、呼吸困難などの症状を起こす。その問題の8大食品は、牛乳、卵、ピーナッツ、ツリーナッツ(アーモンドやクルミ)、魚類、貝類、大豆、小麦。子供の場合、外食、友人宅、学校などでの偶然的な食物摂取による発作が7割。外食をする場合は、アレルギーであると事前にレストランに申告をしたにも関わらず、食後にアレルギー症状が出て、レストラン側と訴訟問題になる事例も多い。実際に命に関わることなので、レストランやホテル側も細心の注意を払って対策を行っているのだ。

日本は、どうだろう。アレルギーと診断される患者は、人口の2〜3パーセント。厚生労働省(平成16年)によると「食物アレルギーに対する有効な治療法はないため、原因となる食物を食べないことが予防・治療を行う上での原則となる。そのため、アレルギー体質をもつ方に適切に情報が伝えることができるよう、厚生労働省では、食物アレルギーの原因となる食物を調査し、平成13年より、発症件数が多いものや、発症した際の症状が重いものについて、食品に使用した場合の表示を食品衛生法上義務付けた」とある。義務づけられた平成16年から6年、デパートの食品売り場や、スーパーの食品表示については、かなり几帳面に表示づけられてきているものの、こと外食産業においては、まだまだ欧米に比べて遅れているのが現状。

リーマンショック以来、外食産業が元気がないとささやかれ、早や3年が経過しようとしている。安全で安心な食をうたうレストランやカフェは増えているものの、その「安全、安心」とは、大抵の場合、食品のトレーサビリティー、農家や酪農家などの生産者の顔が見える確かな品質に対しての「安全、安心」に終止している傾向はないだろうか。消費者にとって本当の意味で安心なのだろうか。アレルギーを持つ客とのコミュニケーションを改めて考えてみる。消費者の立場に沿ったサービスを見直してみてはどうだろう。



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